このすば書籍版5巻について。
自分の中で、しっかり整理しておきたいので書く。


[初読後の感想]

色々考えたが「web版を知らなければ素直に楽しめる」という結論に達した。
逆に言えば「web版を知っているから素直に楽しめなかった」のだが。

4巻まではweb版と書籍版で一長一短だと感じていた。
この5巻は、web版で一番好きだった4部(めぐみん編)を再構成している。

紅魔の里への道中は、web版全体の中でも特に印象的だった場面。

・アクセルを舞台にした3部までと一線を画す初めての旅
・日に日に衰弱していくめぐみん(実質タイムリミット有)
・まともに太刀打ちできない格上モンスターたち
・目的地は魔王軍と交戦中という不穏な情報

この長く絶望的な旅路だったからこそ、夜営時の甘酸っぱいやり取りが映えて、その後の里での急接近やシルビア戦、エピローグの感動に繋がると思っている。

ところが書籍版では、かなり様相が変わっている。
まず初めての旅は既に4巻で終えており、アルカンレティア以降から始まる。
その上で道中は大幅にカット。ダクネスさえ貫通するドラゴンゾンビや、いきなり殺しにかかってくるゴーレムが削られたことで、危険な旅の印象が薄れた。
里に向かう目的自体が変わっているので、めぐみんの体調はいつも通りで、カズマが気遣う場面もなくなってしまった。

紅魔の里に着いてからの書き下ろし部分は良かった。
観光名所めぐりや、アクアやダクネスの出番が増えているのは好印象。
ゆんゆんは里に向かう目的にも大きく絡んでいたから、もっと活躍してほしかった。
爆焔を読んだ後だと、余計に影が薄く感じられる。

めぐみんとのやり取りがマイルドになっているのは、物足りないけど妥当。
web版はある意味ちょろい展開で、4部以降のめぐみんは積極的すぎるところはあった。それに説得力を持たせていたのが「弱っているところに優しくされた」という理由だから、今回の話の流れでweb並に濃厚に書かれても困る。

シルビア戦の流れは、ifルートとしてはあり。
カズマとシルビアの対決がなくなったり、テレポートによる翻弄が大幅に減ったり、視点が武器探しに移ったりするので、シルビア自体の印象は薄くなっている。

そして爆裂魔法前後の盛り上がりが物足りない。
カズマの失態をめぐみんが看破したのは、書籍版で一番好きなシーン。
だからこそ、この爆裂魔法で決めてほしかった。あるいは爆裂魔法でさえ全く効かないというのを説明してほしかった。それならレールガン展開も分かる。

一番許せないのはカズマが本当にぱっとしないところ。
特に5巻のカズマは最初から最後まで良いところなしで、そのわりに態度が大きくて好きになれない。
シルビアを強化する失態にしても、web版では自ら謝ったのに書籍版では黙っていて、それを棚に上げてアクアを叱責するのが笑えない。

おかげでめぐみんがカズマを好きになった理由がさっぱり分からない。
カズマも16歳と若返っているから、それで納得するしかないのか。

ここまで変えておいて、終章はweb版からそのまま引っ張ってきている。
名シーンなのは間違いないが、めぐみんが爆裂魔法を諦める動機が弱い。
めぐみんが悩んでいた様子が今までに見られないから、唐突に感じる。
レールガンに吸い込まれた爆裂魔法が最後の一発で良いのか、とも思う。

あとはフォント弄りの悪ノリが多く、目についた。
普通の文字でさらっと書いた方が面白い部分がちらほら。


面白いか面白くないかでいえば面白い。
そしてこの改変も分からないでもない。

web版はネット小説だから、文字数や盛り上げどころの配置に気を遣わなくて良い。
そのため良くも悪くも執拗に描写できたし、出し惜しみもなかった。

書籍版はページの都合があるので、この巻に限らず終盤の戦いが駆け足になりがち。
特に今回は元の4部が長大かつ話が繋がっており、これまでのようにエピソードを分散させることも難しく、純粋に削ぎ落とされた部分が多くなってしまっている。

1~4巻と比べてもweb版から変更・削除されたシーンが多く、その影響でめぐみんがカズマに好意を持つ理由が分からず、web版から持ってきた名シーンにも違和感を覚えた。
仮に評価を付けるなら、web版前提で★2ぐらいの評価になる。


……正直もやもやして、この先の巻を読み進めていくことを悩みもしたが。

次の6巻を読んだ瞬間に全て解消した。
6巻はカズマが調子に乗っただけ可哀想な目に遭うも、最後はかっこよく決める話で、web版を読んでいたときのような興奮があった。
どうやら自分は「カズマが仲間のために知恵と技で敵を出し抜いていく」のが好きらしい。

さらに爆焔2~3巻も読み終え、書籍版の設定に愛着が湧いてきた。
今なら違う感想を持つかもしれないと思い、改めて5巻を読み直すことに。



[再読後の感想]

本編1~6巻、爆焔1~3巻を読了済。
初読時はweb版との違いが気になってばかりいたが、今回はすんなりと読み進められた。
これほど文章を削って流れを変えているのに、話が破綻していないのは素直にすごい。

冷静にめぐみん視点で読むと、オーク戦でカズマの窮地を救ったのはゆんゆんの上級魔法で、続く鬼との戦いでは爆裂魔法を無駄撃ちして叱られている。
カズマは紅魔族の上級魔法無双に感嘆しているし、終章への伏線と言えなくもない。

シルビア戦も書籍版の前提条件なら、レールガンは必然に思えてきた。
カズマの失態も、あの時点では誰も兵器の使い方が分からないというフォローが付いていた。実際に切り札を見つけて持ってきたのは手柄だし、あのままだとジリ貧だったから、今回も充分に活躍している。
2~4巻は爆裂魔法でとどめを刺すパターンが続いていたから、今回のレールガンは変化球だったと、好意的に解釈した。
そういうわけでシルビア戦までフォント弄り以外の不満はなく読めた。

ただし決着からの流れが駆け足気味に感じたのと、終章の唐突感は変わらず。
ぎりぎりまで文章を削って、それでもページが足りなかったんだろうなと。

終章については、シルビア戦の書き方次第だったと思う。
カズマ捕縛時のやり取りがもう少し切羽詰まっていたら、めぐみんが足を止めて怒る場面にもっと筆が割かれていたら、きっと印象は違った。
終章で盛り上がりきれないので、読後感がすっきりしないのが惜しい。


とはいえ、初読時に感じたもやもや感はなくなった。
初読後の感想では細々と文句を書いたが、大きな不満は終章のみ。
もし書籍→webの順番で読んでいたら、違う感想になっていたのは間違いない。

再読後に評価を付けるなら★4にするほど印象は変わった。
読んでいるのは同じものなのに、これほど自分の評価がぶれたことに驚く。

今回の件で、読み手の知識や思い込みが、作品の評価に強く影響することを痛感した。